イヴェントアーカイブ
2.01 金 2008
オープニングパーティー
17:00 会場オープン

ベルリン市交通局BVGが前日からバス、トラム、地下鉄を対象にストライキを起こしており、来場者の足が遠のくと予想されたが、想像を超えて300人以上の人々が駆けつけた。徒歩や自転車といった“人力による移動“によってプロジェクトの幕が上がった。(皮肉な事にストライキを起こしたベルリン市交通局は、展覧会会場である旧ベルリン市交通局中央整備工場の前所有者である。)
メインブースにて、カフェキオスクもオープンする。オープニングでは、ビールやグリューワインといったお酒も販売された。

18:00 主催者挨拶

大勢の観客が集まる中、メインブースにて総合ディレクターの柳幸典、ベルリン側リーダーであるエラン・シャーフによる開催の挨拶が行なわれた。

18:30 《あなたの、そしてあなたの為の食べ物》

高橋知奈美によるフードインスタレーション

真っ赤な敷物が敷かれた机の上に、一口サイズの繊細な食べ物が作家の手によってそっと並べられ、観客にふるまわれた。日本食とドイツ食のコンテクストの差異、融合、撹拌する事を意図されていた。
「詳細は作品解説参照」

18:30 《Lovers' Ceremony “I am in your blue eyes”》

ヒロミ+シゲ フジシロによる恋人達のセレモニー

ベルリンにとって移民となる日本人とスウェーデン人の男女が、性を超越した神のような出立ちをした作家と、大勢詰めかけた観客の前で永遠の愛を誓い合うパフォーマンスが行なわれた。
「作品詳細は解説頁参照」

随時  《フェルテン|》

ダヴィッド・ポルツィンによる入国管理パフォーマンス開始

「聖域」に入るためには、パスポートコントロールで作家の承認が得られないと入れてもらえない。しかし「聖域」の奥に安置してあるのは小さな小枝ひとつ。そう、おおよそ世界はこんなものなのだ。
「作品詳細は解説頁参照」

※ダヴィッド・ポルツィンのパフォーマンスに関しては会期中、毎日行なわれた。

21:00 《移動式お花見キット》

シフン製作所による便乗カラオケパフォーマンス

当初シフン製作所が、オープニングでパフォーマンスを行なう予定はなかったが、突如お花見キットに付随するカラオケ用マイクを握り日本のポップミュージックを熱唱。お酒も入っての事もあり、夜のお花見宴会の様相を呈していた。
「作品詳細は解説頁参照」

補足  《ヴァンデルング(ハイキング)》:

エリック・アルブラス+イレーネ・ペツークの壁始動

10日間をかけて向かい側の壁を目指す“壁“の移動が開始された。知覚出来ない程のゆっくりとした速度で壁は、昼夜休むことなく会場内を移動し続ける。
「作品詳細は解説頁参照」

補足  《光のインスタレーション》

オフィリ・ラピドの照明インスタレーション開始

作品が屋外に照明を当てて出来る影のため、作品が成立する日没以降、光が灯される。その時が来るまでは、作品を見る事が出来ない。
「作品詳細は解説頁参照」

2.02 土 2008
ワークショップ&トークイヴェント
12:00 「テントを作ろう!みんなで作るマウンテント!
     でこぼこ 山型、繋いで、くぐって、休んじゃおー」

開発好明による《マウンテント》ワークショップ

開発好明は、《マウンテント》を制作するにあたり、みんなで作るワークショップ形式をとった。ネット上にコミュニティーサイトを設置して参加者を募り、会期前より作家と参加者が一緒になって制作が進められた。参加者は主に20代から30代の男女で、最初は初対面同士、緊張ぎみでぎこちない様子が見られたが、作家の人柄もあって会話も弾み、次第に和気あいあいと制作は進められていった。気が付くと、会話も時間も忘れてテントを完成させることに夢中になる光景も見られた。具体的な作業内容は、作家からテントの作り方が説明されたのち、構造体を木材で作り、布でテントのカバーを作るというもの。このカバーデザインは、参加者のセンスに委ねられた。一枚の布で覆ったり、幾つもの布をパッチワークにしたリ、それぞれ参加者の個性が出ていた。

参加者と作家が二人掛かりで作った第一号テントは、何もなかった会場内で、思いのほか小さく、少し心細そうであったが、強い存在感を放っていた。参加者一人一人が自分のテントを完成させ、次々に組み合わされ、増えていくテントの集合体は、この展覧会が日々出来上がっていくさま、そのもののようであった。
「作品詳細は解説頁参照」

※このワークショップは会期前の1/23、1/26〜31、会期中の2/ 2、3の間で1日3時間程度行なわれた。

15:00 総合ディレクター柳幸典(広島市立大学)
    によるトーク

2007年に自らがディレクターを務めた「旧中工場アートプロジェクト」発案の経緯から始まり、「キャンプベルリン」へと展開、そして現在企画中である「キャンプ広島」へと一貫して続く全体構想、及び文化都市における芸術の役割を語る。柳はプロジェクターで、日本の移民者が、移住先で日本の城を模して建てた建物の画像や、移民を奨励する当時のコミカルなポスターの画像を提示し、今年「ブラジル移民100周年」を迎える日本で企画する「キャンプ広島」のヴィジョンを紹介した。質疑応答では、ベルリン側リーダーのエラン・シャーフの「なぜ日本は戦後移民政策を奨励したのか」という質問に対し、柳は外貨獲得が主な目的であっただろうと答えた。

15:00 企画スタッフによる旧中工場アートプロジェクトの
    展覧会紹介

総合ディレクター柳が2007年に企画した「旧中工場アートプロジェクト」のうち、「ゴミがアートになる!超高品質なホコリ」展を企画担当者であった岩崎貴宏が、「金庫室のゲルトシャイサー」展を運営担当であった大橋実咲が紹介した。「キャンプベルリン」と「旧中工場アートプロジェクト」の共通点として、展覧会会場とテーマがそれぞれ密接に関わり合い、見るものに明解な解釈を与えていることが挙げられる。「旧中工場アートプロジェクト」は、カフェである「キャンプキオスク」にもカタログや資料が展示され、ドイツの鑑賞者も熱心に見ていた。

2.03 日 2008
イヴェント&パフォーマンス
13:00 《移動式お花見キット》

シフン製作所によるお花見ツアー

シフン製作所は、会期中の日曜、会場近くのブルネンプラッツ公園でお花見を開催した。お花見セットをカバンの中に収納し、会場から屋外に逃走することで、作品の機能は最大限発揮される。この作品には鑑賞することと、実際使用することという二つの目的があるが、その二つが同時に行われるのが「お花見」の時である。この日のお花見メニューは、手製のわらび餅と日本茶。行楽日和もあいまって終始和やかな雰囲気でお花見が行われた。途中、通りすがりの通行人も急遽参加するというハプニングもおこった。
「作品詳細は解説頁参照」

15:00 《エンドレス 0》

沖中志帆によるパフォーマンス

よそ見をする事なく、黙々と、指先に意識を集中させて手を動かし続ける。手の中には何もない。手話のような寡黙な動き。規則正しく折り目を付けるような指の仕草を目で追う内に、次第に記憶の中にある折鶴が顕在化してくる。まだ寒さの残る2月初旬のベルリンで、このパフォーマンスは、もの静かに執り行なわれた。
「作品詳細は解説頁参照」 

※沖中志帆のパフォーマンスに関しては毎日3時間ずつ行なった。

2.04 月 2008
レクチャー
15:00 「TALK! TAKE1!」

広島市立大学芸術学部について:
鰕澤達夫(広島市立大学)によるレクチャー

ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学にて、広島市立大学の組織構成から具体的な授業内容まで、写真を見せながらのレクチャーが行われた。参加者は、広島に興味を持った学生や、将来的に交換留学を希望する学生等。積極的な質問や意見交換が飛び交った。

2.05 火 2008
アーティストトーク&イヴェント
15:00 「TALK! TAKE2!」

この日は参加作家のシフン製作所と入江早耶が作品の前でプレゼンテーションを行なった。シフン製作所は、日本の伝統文化であるお花見を、いつでも行なえる移動式にした経緯を、入江は作品制作の着想となった郷土富士の存在と、北斎からの影響について語った。質疑応答では、運営管理を担当する古堅太郎が通訳として間に立って行なわれた。

19:00 《予期できぬこと》

島袋道浩によるシークレットイヴェント

待ち合わせ場所と時間だけしか分からないこのイヴェント。そして、展覧会参加者に対して行われるという異例のプログラムであった。その意図とは?ベルリンテレビ塔前、待ち合わせ時間は展覧会閉館後の19時、参加者が島袋に連れて行かれた先は創業1621年、ベルリン最古のレストラン「Zur letzten Instanz(最後の審判)」だった。
「詳細はこちら」

2.06 水 2008
イヴェント
15:00 「折鶴問題」:都市交換問題プロジェクト

これまでに広島とベルリンの両都市間で、本展覧会に向けた交流プロジェクトとして、プレイヴェント#001〜#004を開催してきた。広島特有の問題である「折鶴問題」を提示し、その解決方法を共同で探ってゆく。そのことで来場者との直接的な交流が行われる。今までにとりためた膨大なアンケート用紙は、ファイルに閉じられアーカイブスペースで見る事ができた。
「詳細はプレイヴェント解説参照」

     《エンドレス 0》

沖中志帆によるパフォーマンス

「折鶴問題」の最終イヴェントとして沖中志帆によるパフォーマンス《エンドレス 0》を合わせて開催。作家が見えない鶴を折り続けるという行為を通して、広島の折り鶴問題について来場者に問いかける。
「作品詳細は解説頁参照」

2.07 木 2008
批評会+アーティストトーク
15:00 「TALK! TAKE3!」エラン・シャーフ
    (ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学)による批評会

ベルリン側リーダーであるエラン・シャーフによる批評会が会場で行なわれた。まず会場入り口付近の福田恵、友枝望の両作品に共通した「制作プロセスにおける対話の意義」についての講評から始まり、そのプロセスに類似性を持つカロリン・ヴァハターの作品へと移動する。その後、シャーフはそれぞれの作品からキーワードを出しながら、マリー・ルイーゼ・ビルクホルツ、古堅太郎、ダヴィッド・ポルツィンの作品をセレクトし会場内を移動した。最後は、シャーフが映像を専門にしている事から、カフェ「キャンプキオスク」にて映像に関しての討論へと引き継がれる。映像作品を出品したジリアン・ホルツを中心に対話が30分ほど続き、今回の批評会は閉められた。シャーフはこの展覧会で、どのようにアーティスト同士の交流が図れるのか、という点に興味を持っており、「対話」は一つのキーワードであった。
「詳細を現在作成中」

2.08 金 2008
アーティストトーク&作品移動
15:00 「TALK! TAKE4!」

今回の「TALK! TAKE4!」では参加作家のヒロミが作品の前でプレゼンテーションを行った。ベルリンからの参加作家であるジリアン・ホルツを中心に意見は交わされ、オープニングでのパフォーマンスからプロジェクトのテーマである「移動」が作品にどのように組み込まれ、鑑賞者にどのような印象を与えていたかという事や、今回の作品の前身である《恋文ヲ碧眼ノ、君ト黒髪》との関連性や、今後の展開などについても語った。英語やドイツ語が交わされるなか、観客の日本人が日本語を使っての質問といった様に、多様な手段で意見交換が行なわれた。

15:00 《民芸品移動》

友枝望が既製品である熊の変形作業開始

北海道の民芸品である四つん這いの熊を、ベルリンのシンボルである立ち姿に変えるプロジェクト。友枝望は、既製品である木彫りの熊を、最終的にどこまで変形させていくかという対話を、来場者や関係者と会期中繰り返し行なってきた。この日より展覧会最終日の再展示を目指し、会場横の工房にて熊の変形作業が開始された。このため会場には作品が不在となった。
「作品解説参照」

2.09 土 2008
イヴェント&アーティストトーク
13:00 《移動式お花見キット》

シフン製作所によるお花見ツアー

天候に恵まれた絶好のお花見日和に、日曜同様、会場近くのブルネンプラッツ公園でお花見を開催。この日のお花見メニューはおにぎりと味噌汁。以前、広島市立大学に交換留学で来ていた学生達がハノーバーからはるばる来場し、全再会の宴となった。
「作品詳細は解説頁参照」

15:00 「TALK! TAKE5!」

古堅太郎とソフィア・ポンペリーによる対談

参加作家間同士の交流として企画されたトークプログラム。最終回ではそのフィナーレとして、プロジェクト運営管理者である古堅太郎に対して、ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学からの代表者としてソフィア・ポンペリーによって対談が行われた。キャンプベルリンプロジェクト全体像を獲得すべく、鋭い視点からの質疑応答・対談が行われた。
「詳細は現在作成中」

2.10 日 2008
クロージングパーティー
15:00 《民芸品移動》

友枝望が木彫りの熊に手を加え再展示

8日から始まった変形作業も終わり、クロージングパーティーに向け会場内に再展示された。変形については、対話によって最小限に留める事に決定した作家は、四つん這いだった熊の右後ろ足の角度を変えることで、ベルリンのシンボルである直立したクマへと変貌させた。
「作品解説参照」

15:00 「OKOKEB」

広島の名物料理であるお好み焼きと、トルコ移民の象徴とも言えるベルリンのドゥナーケバブ。2都市の名物料理が融合した新しい料理「OKOKEB (オコケブ)」(お好み焼きとケバブの造語)が、「キャンプキオスク(※)」にて実演販売された。2つの料理を共演させることで2都市の交流をはかる。用意された50個の「OKOKEB」は好評の内に完売した。
「※ キャンプキオスクについての詳細は以下参照」

17:00 《移動式お花見キット》-夜桜茶屋-

シフン製作所によるお花見宴会

会場にて夜桜の下で宴を開催。17時のクロージングパーティー開始時間と同時に、会場に設置されていた桜が一度収納され、キャンプキオスクへと移動されるパフォーマンスから始まった。夜桜の下では味を凝らした大量のおにぎりが振る舞われ、茶屋への寄り客をもてなした。観客を巻き込みながらカラオケが披露され、フィナーレを大いに賑わせた。
「作品詳細は解説頁参照」

※1キャンプキオスク
KIOSK、日本では駅構内にある売店のそれとして知られているが、これはもともとトルコ語で「東屋(あずまや)」という意味を持ち、ベルリン発祥の売店のことである。日本と同様に、新聞や雑誌、飲み物や嗜好品などの簡単なものはここで手に入り、深夜まで営業しているため、多くの人々に重宝されている。そのこぢんまりとした店がまえはどこか暖かみのある雰囲気を持っており、人種を問わず気兼ねなく立ち寄れる場所だ。
その特質を借り受け、キャンプベルリンにも、こうした憩いの場を設けた。
展覧会場中心部に位置するキャンプキオスクではカフェショップが営業され、「旧中工場アートプロジェクト」と「都市問題交換プロジェクト」のアーカイブが展示された。来場者を暖かく迎え入れるためのキャンプキオスクは、交流の場としてだけではなく、キャンプベルリンのメッセージを発信する場所ともなった。
また、会期中には様々なイヴェントがこの場所から行われ、会場をにぎわせる中心的役割を担った。